物件探しの前に知っておきたい『土地の履歴』|補償コンサルタントの調査で見たこと

家を探すとき、どうしても間取りや価格、駅からの距離などに目を向けがちです。

けれども、その家が建つ土地の歴史について考えることは、あまり多くありません。

私はかつて一年ほど、補償コンサルタントの仕事に携わり、土地や建物の調査に関わることがありました。
その中で、今でも忘れられない場所があります。

それは、山里の小さな石の碑でした。

山里で出会った小さな石の碑

清澄な川の水が流れ、真っ青な空に新緑が映える山里に、ある調査で訪ねたことがあります。
一年ほど補償コンサルタントに携わった頃の話です。

山の裾と民家の間に、小さな石を積み上げた1m四方ほどの碑があるとのことで、調査に向かいました。ちょうど砂防工事が入る予定の場所でした。

民家に入ったときの静かな空気

碑の調査の了承を得るために、碑と関連の深い民家を訪ねました。呼び鈴がないので声をかけると、少し重い木の戸が開きました。

すると、薄暗く広い土間が広がっています。
履き物はきれいに仕舞われ、土間は隅まで掃き清められていました。
長式台から座敷まで続く空間には、キリッとした空気が流れていました。
あまりにもきちんとした暮らしの気配が滲み出ていて、驚いたのを覚えています。
了承を得た私は、民家の裏、碑のある山の裾に向かいました。

碑の前で感じた不思議な感覚

そこに立ったときの、なんともいえない寂しい感覚。
そして、碑には決して触れてはいけないような、異様な気配。
その感覚を、今でも忘れることができません。

調査の後、民家の方から聞き込みをしました。

その土地に残っていた悲しい出来事

もう25年以上も前のことなので、内容は正確に覚えていません。
その昔この場所で、とても悲しい出来事があったそうです。
出来事のあと、絶えず悲しい影を落としたため、霊魂を沈めるために碑が建てられたとのことでした。
それは、20cmほどの小さな石を積み上げただけの碑です。
私は『簡単に動かしてはいけないもの』と感じ、細かい資料を求め、様々な文献を調べました。

細かくは記述されてませんでしたが、聞き込みの中の当時の状況は確認することができました。
その後、私は離職したため、その場所がどうなったのかは知りません。

土地が持つ空気を感じたもう一つの場所

人の気配を感じるように、土地や家屋にも、何かしらの気配があるように思います。

東京に移ってから、よく散歩に出かけていました。
ある日の昼下がり、公園に立ち寄り休憩をしていると、突然胸が苦しくなってきました。
身体は元気なのに、理由がわかりません。
しばらくすると、主人まで同じように胸が苦しくなり、私たちはすぐに公園を離れました。

そこは関東大震災の悲劇の場所だった

後から知ったのですが、
そこは都立横綱町公園にある東京慰霊堂の横の子どもの遊び場でした。
その場所は、関東大震災の火災旋風により約3万8千人が犠牲になった陸軍被服廠跡地です。

物件探しで気をつけたい『忌み地』の特徴

建物に入ったときに感じる違和感。
踏み入れた土地から感じる違和感。
そういう感覚の奥には、必ずと言っていいほど何か理由があります。
もしそう感じたときは、無理をせず避けたほうがよいかもしれません。

そして、何も感じなくても、物件を購入する際は土地について調べることが大切です。

また、補償コンサルタントをしていた時、調査する対象物件の中に墓地がよくありました。
主に都市計画道路・区画整理や開発による住宅地造成などに伴う、寄せ墓や移転です。
新たなスペースに墓石を移転・集約し、住宅地の中に混在しないよう状況を解消するためです。

ある区画の住宅で、大きな火災があり全焼しました。
別の場所では、引越し途中で手を複雑骨折。
また、別の区画では事故による死別…。

関連性はあるかどうかは分かりませんが、不思議と災害や事故の話を耳にすることが多かった印象があります。

古くから『忌み地(いみち)』と呼ばれる土地があります。
必ずしも迷信というわけではなく、災害や出来事の記憶が残っている土地があります。

さまざまな土地のリスク

周辺環境・心理的リスクが高い場所

・墓地
・斎場
・屠殺場
・昔の刑場や塚、古戦場
・ゴミ処理場など近隣する場所
・事件・事故・自殺などによる事故物件
・交通量の多い道路による、騒音や振動
・高圧線や高架線から発生する電磁波による人体影響への不安  

災害リスクが高い場所

・過去の浸水や土砂災害が起きた場所
・土砂災害警戒区域など危険性が高い場所
・川や用水路が近い低地
・道路、線路、高架、河川の急カーブに面した土地
・地下坑道のある土地
・古い擁壁のある場所

特に低地では、大雨の際に周囲の雨水が集中することがあります。

地盤が弱い可能性がある土地

・河川の近く
・谷地形
・池や湿地だった場所

先人が残したメッセージ

『鬼』『血』『針』『首』『蛇』『赤』…。
このような強い意味を持つ字を含む地名や、
『水』を連想させる漢字が含まれる地名には、古くからの災害や凄惨な歴史を示唆されている場合があります。『氵』の水の部首を含む漢字もその一つです。

地名や土地の歴史、周辺環境や災害の記録。
目に見える情報だけでなく、その場所の時の流れに目を向けることは、物件探しの大切な視点の一つだと思います。

家は建物だけで成り立つものではありません。
土地の上に、これからの暮らしが積み重なっていく場所です。

これから住まいを選ぶときは、価格や間取りだけでなく、
その土地がどんな場所なのかを確かめ、納得した上で購入すると、何かあった場合少しでも負担が軽減できるかもしれません。

物件探しの前に土地を調べる方法

土地の履歴は、意外と簡単に調べることができます。
少し手間をかけるだけで、その場所がどんな歴史を持つ土地なのか、ある程度知ることができます。

ハザードマップを確認する

まず確認しておきたいのが、自治体が公開しているハザードマップです。

洪水、土砂災害、津波など、自然災害のリスクがある地域が示されています。
最近では、多くの自治体がインターネットで公開しています。

過去の災害履歴を知るうえでも、まず最初に見ておきたい資料です。

昔の地図を見てみる

昔の地図を見ると、その土地が以前どのような場所だったのかがわかることがあります。

例えば、
・田んぼ
・池
・湿地
・川の流路

こういう場所は、現在造成されて住宅地になっていることが少なくありません。
このような土地は、地盤が弱い可能性があります。

こうした情報は、
国土地理院(国土交通省)が提供している地図・空中写真閲覧サービスや、
今昔マップon the web(埼玉大学教育学部)などがあります。
現在の地図と過去の地図を見比べることで、その土地が以前どのような場所だったのか分かることがあります。

また、必要であれば管轄法務局で閉鎖登記簿謄本(現在使用されていない過去の不動産登記記録)『旧土地台帳』の閲覧ができます。
最新の登記事項証明書には載らない過去の所有者、担保設定(抵当権など権利関係の変遷)、古い地目(沼地など)が確認できます。
必要に応じては交付申請書を提出すると取得可能です。登記・供託オンライン申請システムからも請求可能です。(一部、法務局窓口か郵送のみの対応あり)

悲しい出来事について書くことをしばらく悩みましたが、
新しく生活を始める方が、健やかに暮らしてほしいと願い、この話を書きました。
少しでもお役に立てれば幸いです。



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