手放せなかった理由|和箪笥と過ごした時間

いつも隣にあるのに、
その存在は、少し大きすぎると感じてしまうものがあります。

日常に着る服を取り出し、
一度も袖を通さない和服をしまい、
宝物をそっと閉じ込めている場所。

けれどそれは、
心の塊のように、大きく感じてしまうのです。

光沢のあるウォールナットの扉を開けると、いつも変わらず、桐の香りが広がります。

大切なものを取り出す、ほんの一瞬です。

引き出しは少し重く、
開けるたびに、両手の力がいります。

それは、大切なものをしまう場所なのに、
どの部屋にも、なじまない存在でした。

白い壁に、クリーム色のフローリング。
その空間にはなじまず、どの部屋に置いても場所をとる、大きな存在。

どうなじませるか、悩み続けてきました。

気がつけば、二十五年。
子どもたちも、すっかり成長しました。

この箪笥も、少しは役に立っていたのだと感じる出来事がありました。

それは、
子どもたちの七五三と、成人式でした。

そのたびに、観音扉を開けて、
しまっていた着物を取り出します。

あのときのままの、
そのままの形で、静かに、そこにありました。

大きくて、場所をとって、
どの部屋にもなじまない存在のまま。

それでも、手放せずに、ここまできました。

気がつけば、
この箪笥と一緒に、暮らしも重なってきたように思います。

完全になじむことはないのかもしれないけれど、
それでもいいのだと、
いまは少しだけ思えるようになりました。

※詳しい内容については、別の記事でまとめています。

コメント