大叔母のための塗り絵

暮しのあしあと

九州に住む大叔母は、今は施設で暮らしています。

ここ数年、塗り絵に夢中になっていると聞いていました。

私は小さい頃から、祖母の家へ帰省するたびに大叔母の後を追いかけていました。
朗らかでお喋り好きの大叔母が大好きでした。

味噌や豆腐、蒟蒻から醤油まで、煮炊き小屋の大きな釜戸で作っていました。まさに自給自足の暮らしです。

火吹竹で釜戸の火をフーフーと吹き、庭では鶏がコケコッコーと鳴きます。

牛小屋では牛がモーモーと鳴き、乾草を差し出すと、長い舌を巻き付かせてモグモグと食べるのです。

……その姿を見て育った私は、今でも牛タンが食べられません。

夕方頃、大叔母はお風呂の釜に薪を焚べます。薪の焼ける香りが辺りを漂い、1日の終わりを穏やかに知らせます。

そんな大叔母に、何か贈り物をしたいと思いました

そこで思いついたのが、大叔母のためだけの塗り絵です。

B4サイズのスケッチブックに直接ペン入れをし、一冊まるごと塗り絵にしました。

塗ることを楽しんでもらえるように、花をたくさん描き、模様を散りばめ、大叔母が若かった頃を思い出せるような絵も描きました。

喜んでくれるかな。

楽しんでくれるかな。

どんな色に染まるかな。

ワクワクしながら送り出しました。

すると、とても喜んでくれました。

しかも、「次も描いてほしい」とお願いされたのです。

嬉しい。

本当に嬉しい。

ところが――。

贈ってからまだ一週間も経っていません。

ページ数は25ページ。

もう塗り終わった???

あれ???

早すぎない???

もしかして、細かすぎて見えなかった?

一気に塗った?

クレヨンだった?

いろいろ想像してしまいます。

三日間かけて作った料理を、十五分でぺろりと平らげられてしまった時の、あの何とも言えない気持ち。

「しまった!」

「一つの絵につき何枚かコピーしてセットで贈ればよかった〜〜〜!」

そう思いましたが、もう遅い。

きっと細かな模様をびっしり描くよりも、太い線でわかりやすく、のびのび塗れる絵の方が良かったのでしょう。

2023.09.27 00:54

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